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政治と事業はなぜ切り離せない 〜「外せない場所」を押さえたビジネスが勝つという原理


事業は、政治から自由ではいられない

「政治とビジネスは別物だ」
そう考えたい気持ちは分かります。

しかし現実には、
事業が大きくなればなるほど、政治と切り離せなくなる
というのが歴史の示してきた事実です。

それはロビー活動の話でも、陰謀論でもありません。
もっと構造的で、もっと冷静な話です。

国家は「止められないもの」「失うと困るもの」に必ず関与します。
つまり、事業が社会のコアに食い込んだ瞬間から、政治の射程に入るのです。


エヌビディアが簡単には負けない理由

エヌビディアをめぐる米中対立は、
単なる半導体企業の不運ではありません。

重要なのはここ。

エヌビディアは
「AIが動くための前提条件」
を事実上、押さえてしまった会社だという点です。

・AIを動かす計算資源
・開発者が依存するCUDAというプラットフォーム
・電力・冷却・データセンター設計まで波及する影響力

これは「良い製品を作った」というレベルの話ではありません。
産業全体の進行速度を決める位置に立ってしまったということです。

だからこそ、
アメリカ政府も中国政府も、
エヌビディアを無視できません。

これは「強い企業」というより、
外せない場所を取った企業の姿です。


強いビジネスは「選ばれる」のではなく「外せない」

ここで視点を一段抽象化します。

本当に強いビジネスは、
「選ばれている」状態ではありません。

外す理由がない状態を作っています。

これはBtoBでも、BtoCでも同じです。

サブスクリプションの本質

サブスクが強いのは、
月額課金だからではありません。

・日常の一部に溶け込む
・データや履歴が蓄積される
・乗り換えコストが心理的にも実務的にも高い

「やめる理由が見つからない」
構造を先に作っているからです。

無料からの囲い込みモデル

多くの成功サービスは、

  1. 無料で使わせる
  2. 依存・慣れ・標準化を起こす
  3. 逃げ道が減ったところでキャッシュ化する

という順序を取ります。

ここで売っているのは、
機能ではありません。

「今さら他に行けない状態(構造)」です。


政治が介入するのは「儲かっているから」ではない

勘違いされがちですが、
政府が介入する理由は「儲けすぎ(ただけばお金になる)」だけではありません。

・止まると社会が困る
・一部に権力が集中しすぎる
・国家戦略と衝突する

この条件を満たしたとき、
政治は必ず動きます。

電力、通信、金融、交通。
すべて同じ道を辿ってきました。

AIも、いまその入口に立っています。


「コアを押さえる」とはどういうことか

事業のコアとは、
製品の特徴や価格ではありません。

・それが止まると何が止まるのか
・誰の意思決定が遅れるのか
・どの産業が連鎖的に影響を受けるのか

この問いに答えられる場所です。

エヌビディアは、
「AIを作る企業」ではなく
「AIが存在する前提条件」になりました。

だから、
政治とも交渉する立場に立てるのです。


マーケティングも同じ構造にある

これは巨大企業だけの話ではありません。

マーケティングでも同じことが起きます。

・「良い商品」より
・「それを前提に動いてしまう顧客行動」

を作った企業が勝ちます。

選ばれる努力を続けるビジネスは、
常に価格競争・広告競争に晒されます。

一方で、
外せない位置を取ったビジネスは説明する側に回る

これは、規模の問題ではなく、
設計思想の問題です。


事業を考えるときに見るべき視点

もし事業を考えるなら、
次の問いは避けて通れません。

・自分たちは「代替可能」か
・顧客は、何を失うと困るのか
・自分たちは、どの工程を支配しているのか

政治と結びつくビジネスとは、
野心的なビジネスではありません。

社会の流れから外せなくなったビジネスです。


コアを押さえた者だけが交渉権を持つ

エヌビディアの強さは、
技術力そのものではありません。

・産業の前提を握ったこと
・逃げ道のない構造を作ったこと
・国家ですら無視できない位置に立ったこと

この3点に集約されます。

そしてこれは、
規模を問わず、すべてのビジネスに当てはまる原則です。

「選ばれる努力」を続けるのか。
「外せない場所」を取りに行くのか。

政治と事業が結びつく瞬間とは、
その分岐点を越えたときなのかもしれません。

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